■治 療
個人個人の生活環境、病気の状態に合わせた、オーダーメイド治療を目指します。
当院では円をイメージして治療を行っていきます。
■当院での治療目標
ADLとQOLを守り健康で充実した生活、『麗老』を目指します。糖尿病の治療では大抵HbA1cを基準に治療を組み立てられることが多いとは思います。糖尿病学会の血糖コントロール目標でもこのHbA1cを一つの基準にして治療を組み立てるように提案されています。HbA1cは1か月から2ヶ月の血糖の平均値を表します。あくまで平均値であるため、日々の血糖の変動までは把握することが難しくなってしまうのです。合併症を防ぐためには健康な人の血糖の変動に近づけることが大切になります。■合併症を防ぐために必要なことは2つのポイント
Point :(1)HbA1c (2)安定した血糖値簡単に言うと、糖尿病のない人の日々の血糖値に近づけることが治療の目標になります。HbA1cを一つの基準にしています。6.5%未満を目指しましょう。ただしHbA1cには、一つ落とし穴があります。あくまでも血糖の平均値なので、平均値が良くても日常の血糖がいいわけではありません。もう一つは血糖値の上下動のない質の高い血糖管理が重要となります。
どうでしょうか。上が健康な人、下が糖尿病の方の血糖変動のグラフです。糖尿病の方は血糖値のふり幅が健康な人と比べ大きいことが分かります。このふり幅の大きさが血管に負担をかけてしまうのです。薬剤を選択する際には、HbA1cという平均値の改善ももちろんですが、質の高い血糖管理も非常に重要になります。つまり血糖値の上下の変動なく安定した血糖値を目指した治療を行うことが大切になります。その為当院ではHbA1cだけでなく、食後血糖値、空腹時血糖値を総合的に考えて判断していきます。治療は食事、運動でだめならお薬、お薬でだめなら注射と、階段状に考えられる方が非常に多いのですが、実際には円をイメージしてもらいたいです。
どうでしょう?当院での治療イメージを図にしたものです。
食事、運動⇔薬⇔インスリン注射という風に治療は相互に行き来が可能なのです。
以下の表をご覧ください。これはインスリン治療を嫌がる理由を示したものです。どうでしょうか?理由で多いのは注射の痛みに対する恐怖心、注射をしなければいけないほど病気がひどくなっていると思い込む失望感が多いようです。しかし、治療はあくまでもイメージは円です。双方向性のものです。インスリンを開始したからと言って一生インスリン継続というわけではありません(あくまでその人の病状によります)。大切なのは必要なときに必要な治療を行うことです。長い目で見て考えるととてもいい方向に作用してくれます。
「治療」
■大きく分けて治療は3つのセクションがあります。
〈1〉食事、運動 〈2〉内服 〈3〉注射
これらをうまく組み合わせて治療を構築して行きます。
■まずは糖尿病治療のキモともいえる食事。
当院では食事の重要性を考え、栄養士による指導を必要に応じて行っていきます。食事に関して考えるときに2つの側面から考えましょう。それは量と質です。糖尿病の方は一般的に食事量が明らかに多いです。この量に関してアプローチをしていきましょう。江戸期の医師貝原益軒の医学書『養生訓』においても、“珍美の食に対するとも八九分にして止むべし”と、食事に関して腹8分が勧められています。この考えは現代にも当てはまり、糖尿病の方の食事の量を考えた時の一つの目安になります。もう少し食べたいなっていうレベルです。■次は食事の質の面で見ていきましょう
栄養素は大きくいって3つに分かれます。一つは炭水化物、一つはタンパク質、そして最後に脂肪に分かれます。それぞれの栄養素は腸での吸収のスピードが違ってくるために、血糖値への影響が異なってきます。どうでしょう。これは各栄養素を摂取したときの吸収スピードの割合をグラフ化したものです。炭水化物の吸収のスピードの速さがタンパク質や脂質と比べて速いことが分かると思います。つまり体に入ってくる糖が多くなってしまうということです。糖が多くなると血糖値が上がります。すると血糖値を下げるために膵臓からインスリンが多く出されるようになり、膵臓に負担がかかります。糖尿病の人は圧倒的に炭水化物の摂取量が多くなってしまいます。この炭水化物の量の見直しをし、その分を野菜で補うようにするだけでもかなり違ってきます。
■運動療法
運動の大切さ~血糖値をよくするために~運動による血糖値への効果は、大きく2つあり、一つは運動によりインスリンの効きがよくなり、筋肉への糖の取り込みがよくなります。もう一つは運動によりインスリンの助けを借りないで、筋肉が糖を取り込んでくれます。これはインスリンの助けを借りないので、膵臓に負担をかけることなく血糖値を改善することができます。インスリンの作用とは別の作用で血糖値を下げます。膵臓の負担を減らす意味でも運動による血糖改善をめざしましょう。
■運動療法は2つの側面でアプローチしていきます。
〈1〉有酸素運動
〈2〉レジスタンストレーニングつまり筋トレです。
ざっくりいうと散歩と筋トレです。運動の効果は48時間なのでまとめて運動しても効果は少ないです。それよりもなるべく毎日少しづつ運動するほうが効果は高いです。いずれにしても日常生活の中になるべく運動を取り入れるようにしましょう。
■注意点
合併症によりできる運動の種類は変わってきます。合併症の精査がそのため大切になってきます。■内服治療
血糖値を下げるのは膵臓から出るインスリンというホルモンの働きです。お薬の種類は大きく3つに分かれています。〈1〉インスリンの出をよくするお薬
〈2〉インスリンの効きをよくするお薬
〈3〉糖の吸収を抑えたり、体の外に出してしまうお薬
こうした作用のお薬があります。こうしたお薬を各個人の生活環境、病気の状態に合わせて、オーダーメイドの治療を心がけております。
■インスリン治療
そもそも皆さんはインスリンにどういうイメージをお持ちでしょうか?注射が怖い、治療が最終段階に来た。病状がひどい。こういったマイナスイメージをお持ちでしょうか?治療は階段を上るように順番に行うものではなく、あくまでも円をイメージしたものです。長い目で充実した日常を送るためにいま必要な治療を行うという視点で考えてみて下さい。インスリン治療は主に、体からインスリンが出ていない方が中心になりますが、血糖値が非常に高い方にも適応となります。血糖値が非常に高い方はお薬が効きにくくなってしまいます。そのため一度血糖値を落ち着けるためにインスリンを使い。安定したのちにお薬に戻すという事も行います。■体重測定の重要性。
肥満は糖尿病をはじめとする生活習慣病にとって非常に重要な問題になってきます。肥満、特に内臓脂肪型の肥満では、脂肪細胞から様々な炎症性の物質が出ることによりインスリンの効きを悪くしてしまいます。インスリンの効きが悪くなると、膵臓がたくさんのインスリンを出そうと頑張り、膵臓が疲れてしまうという悪循環に陥ってしまいます。この悪循環を断ち切るために、減量はとても大切なことになります。
減量には何が大切になってくるでしょう?それは、減量を意識づけることです。意識づけるために体重測定は非常に重要になってきます。感覚でやせたなと思っても意外に太っていたなんてことはないでしょうか?
自分の感覚と実際の数字は必ず一致するでしょうか?また体重を図っているとその数字は意識づけをされるため「食事の時にもこんなに食べたら食べすぎだな」とブレーキもかかるようになります。